IIRサロン報告

さる3月末にIIRサロンが行われました。
テレビでもおなじみのロバート A. フェルドマンさん。
サロンの内容を下記の通りご報告致します。
以下は参加された10期の加藤さんによる報告です。
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日時 :平成20年3月26日
場所 :海洋船舶ビル10F(港区虎ノ門)
 懇親会:盛香園
参加人数:IIR関係:   35人
 IIR関係以外:120人
講演: :ロバート A. フェルドマン
 モルガン・スタンレー証券 経済調査部長、チーフエコノミスト

日本経済は、うまくいくだろうが、大変なことになる。よろよろ千鳥足の成長である。
良くなったり、悪くなったり、良いところもあれば、悪いところもある。
現状では、日本は、投資対象になっていない。日本にお金を送り込みたいとは思っていない。
日本人も外国に逃げている。政治が不安定で、経済政策が進まない。
この点が株価の下落の因になっている。

2008年の日本の実質成長率は0.9%とみている。他社はもう少し高めに見ている。
住宅関連が、昨年40%も減少している。
今年は昨年より良くなるだろうが大幅な回復は見込めない。

個人消費は0.6%ぐらいしか伸びないだろう。これは所得が増えないからである。
企業の設備投資の伸びは、0.8%ぐらい。この景気後退期にこれは良好な数字である。。
食品関連は、コストアップとなっているが、消費者の力が強いので価格に転嫁できないので、
薄利多売となる。値上げができないので、量が減っている。
資金力のある者によるM&Aが進み、業界再編成となるだろう。

景気の流れを見るのに、CRIC分析が良いだろう。(Crisis-危機、Reaction-反応、
Improvement-改善、Carelessness-怠惰)。CRICの順に循環する。現状は、危機である。
政治の不安定が続いている。
道路特定財源の一般財源化、日銀総裁の不在(政策委員はしっかりしている)。
いつ解散、総選挙になってもおかしくない。改革派(前原、浅尾、河野、小池、中川)、
大連立(小沢、福田、麻生)、急進連立(横路、古賀、伊吹)などの選択あり。

いざなぎ景気は大きな循環であったが、今回の景気循環は、うろうろ、くねくねの
変動幅の小さい循環である。理由は、いざなぎ景気のときは、在庫を貯めて、需要を出して行った。
在庫調整のほうが、生産調整より金がかからなかったからである。
今回の景気は、在庫を増やさないように生産調整している。
資本、労働、調達が容易なので生産調整にあまりお金がかからないからである。
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世界経済の予測:
原油価格は、バレル当たり100ドルを超える高値である。
下がるであろうがどこまで下がるか分からない。高止まりする可能性が高い。
日本のエネルギー効率は顕著に良くなっている。

1970年原油を500万バレル/日消費していたが、30年以上たった2007年の消費は
420万バレル/日である。消費を毎年1%ずつ減らしてきたことになる。
これは日本のエネルギー政策の大成功である。エネルギー源の分散化、
代替エネルギーへの転換、生産効率の向上、代替技術の開発などによる。

農産物価格は、高止まりするだろう。価格は据え置かれても、
量が減っている。需給バランスがとれない。、供給は、農地面積 x 生産性
農地面積は、あまり増えない。対策はあるが金がかかる。
生産性については、遺伝子組換え作物や治水の整備でよくなる可能性ある。
需要は、新興国での需要増が大きい要因である。特に肉の需要、穀物の需要。
“Buy Chicken”: (肉1kg生産するのに、飼料10kg必要、一方鶏肉は、
1kg生産するのに2kgですむ)
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為替予測:円高に進むだろう。しかし、現状は大した円高ではないと思っている。
1995年1ドル83円であった。今は、100円ぐらい。その間日本の物価指数は、
100から110になったにすぎない。米国の物価指数はその間、151から212になっている。
物価指数で為替レートを計算すると現在のレートは59円になる。
中国元がどうなるかが問題。修正は必要である。固定相場を外し、フロートにすると、
もともと元の信頼は薄いので元安になってしまう。中国政府は、徐々に元高に持っていくだろう。

ロンドンのホテルの数字はドルかと思ったがポンドであった。大したホテルでないのに
300ポンドである。異常である。
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サブプライム問題:
2007年初めサブプライム問題での損失は1000億ドルと言われた。
それが2000億ドルになり、今はもっと多いといわれている。
私の分析では、4000億ドルになるだろうと見ている(プライムローン、カードローン、景気悪化による損失なども含む)。

分析は、1.指数を使った。2.2004年、20006年、2008年に出る不良債権の額の比較。3.Foreclosure(差押さえ、処分)の比率を用いた。

誤りはどこにあったのか:
1.借り手(投資家):ゴルフ場のキャディが頭金なしで、全額借金して、
 見てもいないアリゾナの住宅を5軒も買っている。無茶、無責任であるので、
 借金を返せなければ住宅を取り上げられるのは当たり前である。
 無責任者を救うことはできない。
2.貸し手(金融機関):詐欺まがいのやり方で、やりたい放題をやってきた。
 手数料、保証料、利息を取ってきた。5年間ぐらいの不良債権比率をベースにした、
 格付けを利用していた。やりたい事を先に決め、信じられるように後で固めた。
 売るということから前提を作った。
経営者の責任は大きい。損失を蒙るのは当然である。
3.監督官庁:景気がよく、すべてがハッピーだったので、やめろと言えなかった。
 サブプライムローン以外の資本市場は充実していた。

ぼつぼつ先が見えてきた。
厳しく言う人が出てきた。倫理欠如の無責任者に対しては、救済しない。
マケインは無責任な投資家は責任を持ってもらわなければならないと言っている。
オバマも似たような考え方である。
本当の価格が分れば回復する。これが底で、これ以上下がらないとわかると資本は戻ってくる。
RTCも公的資金は出さないが、制度を保つため、市場の安定のため救済取引の金を貸すことにした。
ベアー・スターンズの買い取り資金を出している。
良い方向には向かっているが、最終的になるには1年ぐらいかかるだろう。
損失は金融機関が被ることになる。債務者にForeclosureをかけて、
債権を回収することになるが損失は膨大である。                    
(文責:加藤彰夫)